その日はなにも上手くいかない日で、僕と弟は実家のソファーに座りながらどうするべきか考えていた。
何もしたくないしかといって何もしないまま一日を終えたくない。
そんな時弟が僕にこう言った。
「映画見ない?」
僕は答えた。
「コメディ見ようぜ」
そうしてネットフリックスを開き我々がコメディジャンルを漁っていると一本の映画がおすすめされていた。
「雨の日は会えない、晴れた日は君を思う」
とりあえずぶっ壊す話らしい。この憂鬱な気分も吹き飛ぶだろう!
そう思って見始めた我々に最初に飛び込んできたシーンは助手席の妻が交通事故によって死ぬシーンだった。
この辺で我々は早々に悟り始める。これは少なくともコメディではないな、と。
主人公はディヴィス。彼は義理の父親が経営する投資銀行で働く優秀なサラリーマンである。
ハイソサエティの世界に属し妻も美しく、日々同じ時間に目覚め社内での評判もすこぶる良い。少なくとも蛮族ではないことは明らかだ。
そんな彼は交通事故で妻を失い自らも負傷する。完璧な生活に告げられる突然の終わり。
そんな彼は妻の死に何も感じていない自分に気が付く。彼は本当に自分が妻を愛していたのかわからないと思い始める。
そして破壊が始まる。
最初は「M&M'sピーナッツ」を売っている自販機にお金を入れても吐き出されないことへの苛立ちから始まり(ここからクレーム係の女性カレンと関係が進む糸口になる)
木、家の冷蔵庫、義理の父の家の電灯、会社のトイレの個室のドア、パソコン、カプチーノマシン、解体中の他人の家、そして最後には自らブルドーザーを買って自宅を破壊する。
コミカルに描かれる破壊の情景描写に我々は一切笑うことなく画面を見つめ続けていた。
これ絶対コメディ映画じゃねえな、モンティパイソンでも見とけばよかったなと思いつつ。
しかし彼はシングルマザーのカレンと恋仲になり、そして彼女の子供であるクリスによって現実に引き戻されていく。
そして最後に妻ジュリアの基金設立パーティをぶち壊しにすることで破壊は終わりを告げる。(この辺で妻が自分とは別の男と浮気し子供を作り中絶していたことが分かる)
この辺で我々の表情は完全にひきつっている。マルクス兄弟の映画でも見とくんだった。
そしてその後ジュリアの基金として壊れていたメリーゴーランドを彼は直します。初めての再生。そこでやっと義父との関係も修復し、我々の最悪な一日を象徴する映画は終わりを告げたのであった。
ネットフリックスに言いたいのだが破壊することはコミカルな行為ではない。蛮族としてそこだけははっきりと伝えたかった。
喪失、破壊、再生の過程の中で彼は現代人から一度蛮族になることでもう一度社会に戻る訳ですね。
この映画はいい映画かどうか。蛮族としては好きでした。ものを壊すので。
けど雨の憂鬱な気分の時ではなく、晴れた星降る夜に恋人とみることをお勧めします。
恋人がいない人は恋人を作ってから見ましょう。恋人が作れない人は恋人を創造してから見ましょう。恋人を創造できない人は手軽なものを破壊しながら見るのがおすすめです。電子レンジとか。
登場する俳優、ナオミワッツもジェイク・ギレンホールもジュダルイスもいい顔してるんで観るといいと思います。
晴れた日にね。