エチュード的な戯曲『川の中で生きているような』
【登場人物】
・蛮族
蛮族が、そこそこ流れの速い川で槍を川底に刺し、耐えている。
しばらくすると覚悟を決めたように動き始める。どうやら、向こう岸へ向かっている
らしい。
蛮族:前に進んでいるのかはわからない。いや、人生というものは横這いだ。真っ直ぐ、お前が前だと思っている方へ進んでいるようで、その実横に見える死に引かれていく。お前にも見えているだろう。視界の端にちらと映る、滅びの彼方が。
蛮族、ちょっと流されるが何とか持ち直す
ではなぜ、俺たちは進むのだろうか。永遠の先までどっぷりと暗澹に浸かる眼前の、その宇宙の泥沼を越えた先に、光と言っては安直な、ただ先が、あるような気がするのだ。俺は夢想家だ。だが夢を見るのはいい。それは人類に与えられた最高の、権利。いや権利という言葉には反吐が出る。最高の、叡智なのである。
蛮族は渡り終えると、雄叫びをあげた。