蛮族の生活

蛮族です、未来を喰らいつくします

2021-01-01から1年間の記事一覧

散る会うと(早川 葵)

猫が鳴く猫が愛する猫が産むそうして世界は今日も膨らむ 今日もほら、ミントを撒いてく今日もほら、世界を滅ぼしたいからね 大体は爆薬で済む大体は。確定申告以外のことは 悲しみがたとえば5月のねこちゃんの遊具に降り注ぐ雨ならば アネモネをいつものよう…

花降る街にさようなら

叫んでは負けて真夏の孤独かな 雨の中駆け抜けてゆく祭りかな 死んでいく百合湖に浮かべおる 八月のまどろむ街の雑役夫 林葬や葬列の背に浮かぶ汗 炎昼や街は間断もなく膨れ 万緑の中耐えようもない私 夏に入る熊を放っているときに 青年と鉄塊交差して夏だ …

百日紅

さるすべりって語感はすごく滑稽なのに漢字にすると百日紅っていうんだよ、百日の紅、綺麗だよね。 そう彼女が私に言ってきたのは夏が始まったころでまだその花は咲いていなかった。 「百日紅の花って見たことがある?紅って名前がついているけど私は白いほ…

射干玉

ぬばたまの闇に煌めく蛍たち君と眺める<さよならの夏> ゆっくりと氷を溶かす暗闇に二つ灯った線香花火 「夕闇を歩くときには私はね泳ぐようにね息をしてるの」 終バスの赤の表示に飛び乗ってあなたは夜の住人になる 星が降る夜には少し目を閉じてそれから…

夕暮れが僕らを包む清潔に包まれてく貴女は繭に 「さよなら」は高潔なのと言ってたね肌を刺してく真冬の息が 少しずつ駄目になってく王国に今年も夏はやってきますか エプロンを裂いては笑う花びらになったら街はすっかり夏だ (早川葵)

産地直送短歌

夕凪が僕らを包む明後日になったら消える<夜に吐く息> さみしくて肌に触れれば消えてゆく感情たちを恋と呼ぶのか 「ラッキーになりたいからさ」一箱のLuckystrikeを買っていく 冷え切っているスーパーで冷え切ったコーラを買って思うさよなら 間違えてほん…

貴方のための俳句

人死んで煤煙の街花だらけ 暗闇に明日を見つければ花火 止まらない震えや祭りの音がする 溢れゆく梅雨の匂いや犬が死ぬ 診察を待つワラビーよ夏の果て 短日の駅に獣の影映る ひたひたと鬼に成りゆく寒さかな 北風や目をつむりつつピアノ焼く 歩くたび世界が…

怠惰

【生活】 湯船の中に夏野菜と親指が浮いている 汚い生き物を食べ続けてきたのか我々 誕生が爆破であるというなら飛散距離は割り出せない シャーマンたちが作ったポトフの中に俺の霊魂が浸してあるかもしれぬ 疫病が蔓延していることでしか生まれない詩が残念…

美しい呪い

「夏の空はピンク色をしていて好きなんです」この前の美容師の言葉が忘れられずに、夕焼けを見上げるようになった。 これから誰と肩を並べて歩いても、きっとどうしようもなく思い出す。いつも一番好きな映像・音声で再生されて、映画のフィルムのように焼き…

書くということ

小説を書くようになってから、私の頭の中にいつでも小説の事が居座るようになっている。 寝ても覚めても談笑していても働いていても歩いていても静かに息を吐いても。生活の中で彼/彼女は私の中にいて私の書いている小説の登場人物たちは好き勝手に歩き回っ…

宇宙ビッグデータ

降りしきる音と車輪の音、人間の話し声、僕の沈黙。あらゆるものが運動いて、それが永久機関のように感じるのが心地よい。地球が破裂した後でさえ、僕たちの残骸は漂うことで運動し続けていくだろう。 そこで、すべての曲が歌われなくなったとしても、発声も…

サマー不要論

微睡みをラムネサイダーで取っ払う君は映画を倍速で観る 夏風邪をガリガリ君で冷やしてる雫が垂れる、きみは要らない 激しめのジャズが攪拌するときに割りましたからもうさようなら いつもいたところにあなたは(生きてない)紅茶はすべて腐っているのよ 名…

花降る夜に会いましょう

国境は遠し 花降る街に春 腐りつつ海へと潜る鯨かな 逃げていた白鳥の王抱え込む 密やかに貴女は泣いていて寒い 王国が滅んではまた百日紅 嘘を吐き煙草を少し長く吸う 華族だと名乗る女に雪積もる 魔を祓う札を抱えて祭りかな 花の名を伝えてゆるく夏の坂 …

賞味期限切れの生活(としての六月)です

滴っている六月の冷たさが マッチ擦り恋文燃やす梅雨です 雨だしさぁコーヒー飲んで晴らそうな 傘もなく走る(書類を抱きしめる) 目的もなくカレー屋を眺めてた 泣いている貴女は遠い<青葉風> 「みんなさぁいなくなったね」百日紅 冷え切ったコーラを買っ…

道草食って虫食って

輪になった蟷螂たちが流されて最期はいっしょだ排水溝だ 絶対に溶けあわないものそれは俺の魂お前の魂、蛹 ひとりでは生息できない生体は直ちに脳を右手に植えろ 胡瓜から飛び立つときの踏切で生命たちが配膳される 鱗粉が撒かれた灰の首筋に《生まれる前は…

じゃんけんをしましょう

じゃんけんほい,僕の勝ちです。なぜならあなたが思いついた手に勝つ手を私は出すことにきまっているからです。今決めた。それがこの空間を支配するために書くという行為をした者の特権です。てやんでぃ。 冗談は顔だけにしといて池田澄子の名句「じゃんけん…

吾を統ぶ鷹

谷川俊太郎がその一時期の経済的貧困を脱せれたのは彼の作品ではなく「マザーグース」の翻訳によってであった—という話を思い出して書こうと思ったらそれを書いてある本(自選谷川俊太郎詩集ー岩波文庫の解説部分)が見当たらない。普段の自分を責め,また神…

詩:竜巻とケンタウロス

人間とは何か、すまーとほんが答えてくれる、世の中だったらいいのにな。夜の風が、ぼくの祈りを飛翔させた。でもそれはうっかり竜巻となって、結局のところ村は壊滅した。夏なのに。 それはとても大きな災害で、ぼくたちはひたすらに聖なる何かを希望してい…

僕と彼女が出会うまで(或いは僕と彼女が出会わなくなるまで)

あっちゃうね,あっちゃったのね,またまたね,ほんとはあってなかったりする? 君と会う日は晴れだったのか雨なのか雪だか世界の終わりだったか 人生で今日しか着れない服だって気がついてたの青のワンピース なんかほら天才だから思い切り坂道自転車で駆け…

夜が明けたら

<目が覚める>夜の空気を吸いたくてほおりだされた服に通す手 公園に吸い寄せられる虫達のように私も吸い込まれてく (少しだけ寒いな)誰にも会えなくて自販機にある<あたたかい>押す (最近はどうなんだろう)延々と季節が過ぎるのを待っていた 腕にあ…

散文詩:脳内ラッパー=黒人=人種差別

日記みたいな散文詩を書きました。 深夜のパンチライン 「ヘイヘイボーイ?今はミッドナイト、何処かいかない?ヘイカモン!」 うるせえよ今寝るとこだよ。飯食って、風呂入って、Twitterしてるとこだよ。 最近オレの脳内の黒人ラッパーがうるせえ。いや、ラ…

これは短歌です。

メロンパンぶん投げている春先の庭に殖え続けるかりんとう 楽しくはないかなぁ朝の校庭に人間達を埋める作業は 冷静に考えてみてやっぱやめ、さみしいからって腹下すのは 貧しくはないよだって生ハムも買えるし別に負けてもないし 六人の「貴女」がいたら六…

詩:二十歳に書いた詩がめっちゃ可愛い

詩の機能として、「時をこれ以上なくきちんと刻んでおく」というものがあると思う。自分が書いた詩を読むと、その時見えていた未来や、直面していた現実が夢のように浮かび上がっていく。下の詩は、僕が二十歳の時に書いたもので、ほぼほぼ実話を軸に物語的…

「雨の日は会えない、晴れた日は君を思う」はコメディなのか

その日はなにも上手くいかない日で、僕と弟は実家のソファーに座りながらどうするべきか考えていた。 何もしたくないしかといって何もしないまま一日を終えたくない。 そんな時弟が僕にこう言った。 「映画見ない?」 僕は答えた。 「コメディ見ようぜ」 そ…

詩:若葉のにおいを嗅いでいる

童話のような詩を書きました。都会ながら街を歩いていると、自然が大きく手を広げているのをよく見かけます。いつか、ぜんぶが自然になった街を見てみたいものです。 「もう街にはいないよ」 鼻を研ぎ澄ましたら 木の葉一枚一枚の匂いを知覚できるだろうか …

詩:ハチの巣みたいな家で空気の標本を

ジメジメしたよのなかです。生ごみにコバエが沸き始めると夏の到来を知覚します。ということで、季節感のある詩か戯曲のような散文を書きました。写真を見ながら読むと、イメージがより広がるかもしれません。では、よい梅雨を。 「百万回目の梅雨」 何もか…

珈琲

珈琲 雨の日には蛮族は珈琲を飲みます。 大体において我々は気分を害しますがそれでも飲みます。 珈琲は黒く苦く美味しいものではありません。しかし雨の日にこれを飲むと晴れが来ると我々の間では信じられているからです。 我々以外の世界においては日々こ…

ああああああああ俺はもう川

エチュード的な戯曲『川の中で生きているような』 【登場人物】 ・蛮族 蛮族が、そこそこ流れの速い川で槍を川底に刺し、耐えている。 しばらくすると覚悟を決めたように動き始める。どうやら、向こう岸へ向かっている らしい。 蛮族:前に進んでいるのかは…

ぼさぼさ

ぼさぼさ 蛮族は犬を飼うことを義務付けられています。 しかし資本主義が蛮族の生活に入り込んで以来、貧困のため犬を飼えない蛮族が続出しました。 当初そういった蛮族は粛清される対象にありましたが、第88代酋長ヌババ・マルヌクス が犬の代わりに犬の人…

ゲンカイ蛮族はとりあえず焚火しとく

暗いところで死にたくないからだろう 人間が火を焚くのは そう言ってお前は日記帳を焚べたな 俺たちが幾つもの夢らしき妄想を破り捨ててきたことを考えて、森へ行くことに決めた時の孤独を考えて、それでも煙を見ているとまだ全部が上手く行く気がするんだよ…