蛮族の生活

蛮族です、未来を喰らいつくします

詩:若葉のにおいを嗅いでいる

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童話のような詩を書きました。都会ながら街を歩いていると、自然が大きく手を広げているのをよく見かけます。いつか、ぜんぶが自然になった街を見てみたいものです。

「もう街にはいないよ」

鼻を研ぎ澄ましたら

木の葉一枚一枚の匂いを知覚できるだろうか

その齢を知ることは出来るだろうか

人の手が入らなくなった花壇では

植物たちが復讐のように

生き生きとしているのをよく見かける

石畳を突き抜けた木々の根に足を取られ

たくさんの老人たちはこの街から去り

老人たちの手を引いていた人々も街から去った

もう誰もいないかもしれない街で僕は

植物たちがひっそりと

横断歩道に沿って伸びていくのを見ていたい

一瞬一瞬に生まれいづる

彼らの新たな面積が

人間が石を埋めた面積を上回るのにどのくらいかかるのか

新しいマンモスがマクドナルドを踏みつぶすのにどれくらいかかるのか

新しい原始人たちが原始人たちと争わないように

僕はとびきりの銭湯をつくろう

そしていい匂いのするキャンドルをつくろう

いつか植物が復讐を終えて

やっと海のことを考え始めた時に

僕はもう一度

新しい神話をつくろうと思う

その時に神は人間の形をしていない

どちらかと言えば若葉の形で

どちらかと言えば潮の香りで

どちらかと言えば岩のようで

全くもって寡黙である

そして起こることと言えば

十年に一度の隕石である